【伝わる朗読とは】05:声とは
朗読は、声を媒介にして伝えるものです。
だから、声について知るのは、大切なことだと思います。
今回は、ちょっと理系的な感じなのですが、少々お付き合いください。
声とは、人間がのどの声帯を震わせて、そこに息を通して、その空気を振動させているものです。つまり、音は空気が振動したものです。
そして、語り手が出した声は、聞き手の耳の中の鼓膜を震わして、聞き手は、それを音として認知します。
では、音はどういうもので成り立っているのでしょうか?
空気の振動と言いました。
この振動は、ビジュアル的には、波(波形)として表現されることが多いです。
このときの波の高さを振幅、1秒間に振動する回数を周波数と呼んでいて、理系的には表現することができます。
y=Asin(2πft)
なんて、数式で表現できます。
Aは、振幅、fは周波数となります。
振幅は音の大きさを表現していて、周波数は、音の高さを表しています。
振幅が大きいと大きい音ですし、周波数が大きいと高い音になります。
人間が聴くことのできる周波数は、20Hz~20000Hzの範囲と言われています。ちなみにHz(ヘルツ)は、1秒間に振動する回数を表す単位です。
このような空気の振動を耳の鼓膜が感知して、音として認識しているわけです。
では、音の中身を少し詳しくみてみます。
音には様々な周波数の音が含まれています。この周波数ごとの音の強さを示すのがスペクトル分析です。よく音声再生ソフトでどういう音の成分が多いかを見せるものがありますね。こんな風に・・
ここでは、ピアノの音を例にとってみます。
ピアノの鍵盤の一番真ん中の音は、ハ長調のラの音(A)になります。
この鍵盤をたたくと、440Hzの周波数の音がでるそうです。
でも、この音の中には、440Hzの周波数の音だけでなく、異なる周波数の音、つまり440Hzより高い周波数の成分の音も一緒に出ているというのです。
音の高さというのは、その音の中で一番多く含まれる周波数の音を基本としており、その音を基音と呼んでいます。(ラの音でいうと、440Hzの音)
そして、基音ではない周波数の成分の音を倍音と呼んでいます。
また、倍音には、大まかに2種類あり、
基音の周波数の整数倍の周波数の音を整数次倍音と呼び、
基音の周波数の整数倍ではない音を非整数次倍音として大まかに分類しています。
ラの音を例にとれば、440Hzが基音ですから、
880Hz、1320Hz、1760Hz・・・の周波数の音は、整数次倍音となり、
それ以外の倍音を非整数次倍音ということになります。
このときの周波数の成分を表示するとこんな感じ。
われわれは、基音と倍音を同時に聞いて、ピアノの音として聴いているわけです。
でも、通常は倍音の音なんて聞いていない感じがします。ラの音はラなんですから・・
倍音を理解するには、違う楽器で同じ音を出してもらうと分かると思います。
例えば、クラリネットで、ラの音を出してもらったとします。
これも同じく、440Hzの周波数の音が出ているはずです。
でも、同じラの音も、同じ高さの音であるにもかかわらず、ピアノの音とクラリネットの音は異なって聞こえます。違う音であると人間は認識します。
これはなぜでしょうか?
それは、それぞれの楽器から、440Hzではない周波数の音、つまり異なる倍音が含まれていることが原因なのです。倍音の含まれる割合が、ピアノとクラリネットで異なるからなのです。
人間の耳では、この倍音の成分を聞いていて、それで音の違いを認識しているので、ピアノとクラリネットの音の違いがわかるわけです。そして、その倍音の成分が、その楽器の音の特徴、つまり「音色」を決めていることになります。
そう、「色」を決めているのです。
このことを人間の声に置き換えてみます。
Aさんの声とBさんの声が同じ高さの音を出してもらいます。
それが違って聞こえるのは、その声の基音ではない音の成分、つまり倍音の成分が異なるからなのです。
つまり、声の特徴を決めるのは、倍音の部分であるということが言えるのではないでしょうか。
このことから、この声の倍音成分が聞き手への言葉の伝わり方に関係していて、これが、「朗読の伝わる/伝わらない」につながってくるのではないかと思うのです。